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Bリーグにホームコートアドバンテージは存在するか?――観客数に注目して

morry0371.hatenablog.com

↑こちらも合わせて読んでいただきたいです。今回の分析結果をホームコートアドバンテージ以外の視点から考察しています。

 

 スポーツの世界にはホームコートアドバンテージという言葉がある。これはホームコートで戦うチームが、アウェイで戦うチームに比べて持つ優位のことである。

 なぜホームコートアドバンテージという現象があるのかについては、はっきりと分かっていないようである。ただ、審判のジャッジがホームチームに寄ってしまうことが、もっともらしい原因としてよく挙げられている。

 この記事では、Bリーグのデータと重回帰分析を利用して、ホームコートアドバンテージがBリーグで存在するのかを検討する。特に、ジャッジがホームチームに寄っているかを調べるために、ファウル数に注目して分析を進める。また、ゲームの勝敗に直結するチームの得点についても分析を行う。

分析の方針

 この記事の分析では重回帰分析を用いる。重回帰分析は、ファウル数や得点といった量的な変数のばらつきを、ホームチームかアウェイチームかといった質的な違いや観客数の多さといった量的な違いで説明する分析方法である。

 ホームコートアドバンテージがどのような理由で生じるかは分からないが、そこには観客数の違いが何らかの影響を及ぼしている可能性が考えられる。つまり、観客数が少ないほど、ホームチームとアウェイチームの間で、試合を行う条件の差が小さくなっていき、逆に観客数が多いほど条件の差は大きくなるはずだ。

 このアイディアを分析に盛り込むために、ホームorアウェイの違いと、観客数の多さの交互作用効果に注目することにした。仮説は次のとおりである。

  • 観客数が多いときには、ホームチームの方がアウェイチームよりも、ファウル数が少なくなっているだろう。(審判のジャッジがホームチームに寄っているため)*1
  • 観客数が多いときには、ホームチームの方がアウェイチームよりも、得点が多くなっているだろう。(平均的には、ホームチームのほうが試合に勝ちやすいため)*2

データセット

 bleaguer*3のb.gamesとb.games.summaryを結合してデータセットとした。B1のレギュラーシーズンに限って分析を行った。また、ホームチームかアウェイチームかの情報が取れなかった試合を分析から除いた。結果として、3668試合が分析対象となった。

分析結果

ファウル数

 ファウル数を従属変数、ホームかアウェイか(ダミー変数:ホーム=1, アウェイ=0)・観客数(連続変数・標準化)・これらの交互作用を独立変数に、重回帰分析を行った。その結果、有意な効果は見いだされなかった(all |t|s<0.67, ps>0.50)。また重回帰モデル自体も有意ではなかった(R^2=0.00, F(3,3520)=0.23)。

 したがって、ファウル数は、観客数に関わらず、ホームチームとアウェイチームで差があるとは言えないことが分かった。つまり、審判のジャッジがホームチームに寄っているとは、この分析からは言えなかった。

得点

 得点を従属変数、ホームかアウェイか(ダミー変数:ホーム=1, アウェイ=0)・観客数(連続変数・標準化)・これらの交互作用を独立変数に、重回帰分析を行った。その結果を表1に示す。分析の結果、ホームorアウェイの効果、観客数の効果が有意であった。しかし、これらの効果は有意な交互作用によって制限されていた。

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 交互作用について詳しく調べるために、観客数の±1SD値を計算し、単純傾斜検定を行った。その結果を図1に示す。観客数が多い場合(観客数+1SD値)には、ホームorアウェイの効果が有意であり、ホームチームの方が得点が多いことが分かった。

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図1:観客が多いと、ホームコートアドバンテージが存在する?

 さらに観客数が少ない場合(観客数-1SD値)には、ホームorアウェイの効果の効果が有意ではなくなり、ホームチームとアウェイチームの得点に差はないことが分かった。

 したがって、得点は、観客数が多い場合には、ホームチームのほうが多くなり、何らかのホームコートアドバンテージが存在することが示唆された。

まとめと考察

 本記事の目的は、重回帰分析を利用して、ホームコートアドバンテージがBリーグで存在するのか調べることであった。分析の結果、審判のジャッジ(ファウル数)についてはホームコートアドバンテージが認められず、得点については何らかのホームコートアドバンテージの存在が示唆された。

 なぜ、観客数が多いときにホームチームの方がアウェイチームよりも得点が多くなるのかは明らかではないが、観客数が多いときに限ってホームコートアドバンテージが見られたことは、この現象を理解する上でいくらかのヒントを与えてくれる。

 たとえば、ホームチームが会場に慣れていることは、ホームコートアドバンテージに関係がなさそうだ、ということが分かる。この説明に従えば、観客の数には関係なく、ホームかアウェイかという違いだけで、得点に差が生じるはずだからだ。

 今回の分析では、交互作用に注目することで、ホームコートアドバンテージの発生機序について、いくらかのヒントを得ることができた。今後は、観客が選手に与える影響を調べることで、よりホームコートアドバンテージの発生機序について理解を深められるのではないだろうか。

 

*1:重回帰モデルにおいて、交互作用が有意となる。単純傾斜検定において、観客数+1SD値で、ホームorアウェイのダミー変数の効果が有意となり、ホームチームのほうがアウェイチームよりもファウル数が少なくなっているだろう

*2:重回帰モデルにおいて、交互作用が有意となる。単純傾斜検定において、観客数+1SD値で、ホームorアウェイのダミー変数の効果が有意となり、ホームチームのほうがアウェイチームよりも得点が多くなっているだろう

*3:bleaguerについては次のページを参照:B.LEAGUEデータ分析用Rパッケージ「bleaguer」を公開しました - データで観るBリーグ