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NBA 2016-2017シーズン新人王予想

 今シーズンの新人王の予想は混沌としている。新人王争いでトップを独走状態にあったJoel Embiidが今シーズンを途中離脱することになったからだ(76ers、ジョエル・エンビードの今季残り試合欠場を発表 | NBA Japan)。

 有力選手の離脱だけでなく、今シーズンのルーキーは不作気味な点も、新人王予想を難しくしている。1試合平均得点で見ると、20点以上を記録していたのはEmbiidだけ、10点以上を記録しているのはEmbiidとDario Saricだけだ。Embiidがシーズン途中で離脱してしまった今、新人王レースはどんぐりの背比べになっている。

 そこで、今回はOffensive Efficiency (OE)というアドバンスド・スタッツを使って、新人王候補を考える。OEはShea & Baker で提案されたスタッツで「その選手が終わらせたポゼッションの内、得点またはアシストがついたポゼッションの割合*1」を意味する。

 OEには次に挙げる3つの利点がある。第一に数式がシンプルで解釈が容易である。第二にオフェンスの関与が大きい選手ほど、得点・アシストに結びつかなったポゼッションによるペナルティが小さい。このことはオフェンスの関与が大きい選手には好ディフェンダーを当てられがちであることや、ダブルチームを組まれがちなことをOEが考慮していると解釈できる。そして、第三にオフェンスの関与の大きなプレイヤーのOEや、チーム全体のOEが、チームの勝率と正の相関関係を示す。特に3つ目の利点は、新人王を含むNBA各賞は所属チームの勝率が加味されると考えられるから、今回の目的には好ましい性質であるといえる。

 Basketball-Reference.com(http://www.basketball-reference.com/leagues/NBA_2017_debut.html)のデータを基に、ルーキーたちの平均得点・OE・総出場時間を示したのが下図である。縦軸はOE、横軸は一試合の平均得点、データ点の色の薄さは総出場時間を表している。データ点は上にあるほどオフェンスの効率が良く(OEが高く)、右にあるほど平均得点が高く、色が薄くなるほど一試合あたりの出場時間・出場試合数が多くなる。つまり、ルーキーたちのオフェンスの効率性、得点そのものの量、出場機会をこの図から読み取ることができる。

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 この図で目を引くルーキーにMalcolm Bragdonがいる。出場時間と平均得点だけを見た場合、Dario Saricとよく似たスタッツを記録しているBragdonだが、Saricよりも散布図の上に位置しており、オフェンスの効率が良い。このことから、現時点ではBragdonが新人王に近いと私は考える。ただし、Embiidの欠場によって、Saricの得点が増えることも考えられるので、Saricの活躍にも注目しなければならないと言える。

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*1:ある選手のOEは次式から得られる:(フィールドゴール成功数+アシスト数)/(フィールドゴール試投数+ターンオーバー数+アシスト数−オフェンシブリバウンド数)。分子は得点・アシストが付いたポゼッションを、分母はその選手が終わらせたポゼッションを近似している。また、オフェンシブリバウンドは攻撃機会を増やす、つまりTOとは逆の指標であると想定できるので、TOとは逆の符号で分母に投入されている